Column
コラム
院長のひとりごと 第1回「百日咳」
初めまして。院長の米神です
ずいぶんと遅くなってしまいましたが、ようやく初めてのコラムを書いております。
ここでは私が普段考えていることや、病気や薬に関するちょっとした知識(うんちく)をゆる〜い感じでお話ししていきたいと思います。
さて記念すべき第1回目ですが、消化器外科医であった私がクリニックを開業して最初に印象に残った「百日咳」についてです。
4月の開業当初から、「風邪を引いたあとの咳がなかなか良くならない」「市販薬や他のクリニックもらった薬が効かない」といった長引く咳でお困りの方がたくさんいらっしゃいました。
冬ごろに百日咳流行のニュースを耳にしていましたので、怪しい症状の方は全て検査してみたところ・・・その多さにびっくりしました。ちゃんと統計は取っていませんが、検査した方のうち8割くらいは陽性という印象です。
百日咳は百日咳菌またはパラ百日咳菌という細菌の感染で、最初は普通の風邪っぽい症状で発症します。その後頑固な咳だけが残って、しかもだんだんひどくなるというなかなかやっかいな経過をたどります。ワクチン接種の影響か、最初の風邪症状が軽くてはっきりしない方もいらっしゃいますので、喘息などとの区別がつきにくいこともあります。
・四六時中ではないが、いったん出始めると止まらない
・咳き込んで吐きそうになる
・咳き込んでいるときに「ピー」と音がする
咳が長引いていてこのような特徴があれば百日咳を疑います。
肺炎や喘息ではないことを確認した上で、血液検査で百日咳に対する抗体価が上昇していれば診断確定なのですが・・・結果が出るのに数日かかってしまいます。
鼻や喉のぬぐい液でも検査できるのですが、感度が30~50%程度と低いため、もし陰性でも百日咳は否定できません。
PCR検査など遺伝子検査ができれば感度は90%くらいだそうですが・・・測定機器が高価で駆け出しのクリニックには高嶺の花なのです。
そんなわけで当院では、これはアヤシイ! と思った患者さんには、血液検査と同時に治療を始めてしまいます。だってしんどいですから。
治療はマクロライドという抗菌薬と咳止めの組み合わせになるのですが、やっかいなことに、百日咳の咳は病院で処方されるものも含め、普通の咳止めがほとんど効きません。
ちなみに欧米では、「どうせ咳止めは効かないんだから、百日咳と診断が確定したら抗菌薬を投与してあとは放っておきなさい」という方針だそうです(ひどいですね)。
でも日本にはこんな時のつよ〜い味方、「漢方薬」があります。
実は咳止めが効かない百日咳に漢方薬が著効することがあるのです。当院では抗菌薬と「竹筎温胆湯」というちょっと苦いお薬をベースに、症状によって西洋薬を併用します。
効果がある人は、1週間程度でかなり咳が軽くなります。効果が乏しい方には、もう1種類漢方薬を併用したり、組み合わせを変更したりします。
ちなみに患者さんによって効果に差があるのは、抗菌薬が効かない変異株の影響かもしれないと思っています。
それでも根気よく苦〜いお薬を飲み続けていれば、ほとんどの方は1ヶ月以内にはお薬をやめることができています(それでも長いですけど)
お話ししてきたように、百日咳は診断も治療もちょっと難しい感染症ですし、時間がたてば自然に良くなりますから、多くの方はただの風邪としてやり過ごしているのかもしれません。実際の感染者は想像より多いのかもしれないと思っています。
最後にひとつだけ気をつけていただきたいことがあります。
生後2ヶ月以内、ワクチン接種前のお子様が百日咳に感染すると重症化して生命に関わることがあります。
ご自宅に赤ちゃんがいらっしゃる方は、咳が長引く場合早めに診察をうけましょう。
万が一百日咳だった場合には、しっかり隔離をした上で、お子様に咳などの症状が出た時は速やかに小児科を受診してください。
以上、第1回目のコラムをお届けしました。
次回のテーマは外科医らしく「虫垂炎」の予定です。